ICT教育、世界の動向。 昨年2015年12月に文部科学省が公表した「諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究」より、ICT教育が進むイギリスの新教科「Computing」からこれからの日本のICT教育の未来を探ります。
新教科「Computing」とは・・・?
1999年より始まった従来の教科「ICT」では、ICT リテラシーや情報活用能力の習得を中心としていたのに対し、2013年に新設された教科 「Computing」は、アルゴリズムの理解やプログラミング言語の学習を取り入れるなど、コンピューターサイエンスの内容をより充実したものになっています。
コンピューターや開発されたソフトウェアを使って学んでいたユーザー側でなく、開発の視点に立った問題解決能力を身に着けよう! と言う訳です。
教科「Computing」の指導状況は、一般的にプライマリースクール(小学校)で週に1時間、セカンダリースクールのKey Stage 4(14歳~16歳)では少なくとも週に2時間の授業が行われているようです。
際立つ日本のICT教育の遅れ
そもそもイギリスで「Computing」の前身である「IT」という授業が独立した新教科としてスタートしたのは約20年も前の1995年のこと。 この頃の日本はというと、Windows 95の発売に沸く秋葉原がニュースになったようですが、まだまだコンピューターの一般的な認知度も普及もない時代です。 なんと「IT」に類似する教科「情報」が日本で新設されたのはそこから8年後の2003年のことです。 しかも、中学校の後期・高等教育の必須科目とされていますが、イギリスでは初等教育ですでに「IT」を学んでいたと考えるととても驚きですね。
これだけ見ると大きく遅れているようにも見えますが、日本も文部科学省が掲げる教育の情報化、ICT活用による学びの推進の積極的な支援活動によってその距離が大きく縮まることを期待しています。 そして何よりもデジタルネイティブな子どもたちの吸収力がそれを大きく後押しすることでしょう。
「Computing」今後の課題
先進的で華やかに見える裏側で「Computing」にも大きな課題があります。
- 指導者不足の問題
- 教師の負担
- 授業レベルの低下
この授業を教える専任の教員がいません。 日本と同じようにプライマリースクールでは学級担任制なので他の教科と同様に担任の先生が教えます。 セカンダリースクールは基本的に教科担任制のため、専任の教員が指導することになっていますが、指導する教員のほとんどは以前教科「ICT」を指導していた教員で、数学や理科の教員が指導している場合もあるようです。
先述に関連して、先生たちはコンピューターサイエンスの知識を学ばなければいけないのです。 ただでさえ忙しいのにさらに負担になりますよね・・・
専任の教員がいないしている現状で、よりレベルの高いコンピューターサイエンスを学ぶことは実際かなり厳しい様子・・・
このように、国の決定に教育現場が対応しきれないところが実情のようで、それは日本もイギリスも関係ないかもしれません。 ただ、後を追う日本にとっては、このような参考になる成果や課題の先例があることはうれしいことですね。